星野源『アイデア』についての長々とした独り言(感想)

           
  • 2018.08.28 公開
  • 2018.08.28 更新
  • レビュー
星野源『アイデア』についての長々とした独り言(感想)

皆さん星野源の新曲『アイデア』聴きました?

聴いてない方是非聴いてください、YouTubeに(なんと)フル尺のMVがアップされています。

星野源 – アイデア【Music Video】/ Gen Hoshino – IDEA

いやぁ本当はもっと早くにこの記事を書きたかったんですけどね、それこそリリース日の8/20当日にアップしたかった。したかったんだよ…。

でもなかなかどうして、もうね、曲がどうしようもなく良すぎて、というか凄まじくて、自分の中できちんと消化されてから、というかとりあえず考えがまとまってから書こう書こうとと思っていたら、そんな日はすっかり過去になってしまってリリース日から軽く1週間以上も経ってしまった、というわけです。

そもそも今回の新曲は星野源にとって異例尽くしの楽曲なんです。

 

異例アンド異例の新曲『アイデア』

初の配信限定シングル

まず第一に、『配信限定シングル』であること

星野源にとって初めての配信限定シングルなんです

理由としては、

発売日にみんなで一斉に曲を聴ける感じにはすごくワクワクしますね。リリース前のプロモーションでラジオやテレビで曲を流して、という従来からの段取りではなくて、みんなが同じ発売日に初めてちゃんと曲を聴くことになる。

引用:星野源アイデア特設ページ

ということです。

リスナーの足並みならぬ耳並みを揃えたかった、ということですね。

YouTubeにフル尺解禁

YouTubeにアップされる星野源のシングル曲は通常、動画の真ん中辺りに宣伝が差し込まれています。「どうも〜星野源で〜す」みたいなやつです。初回限定版の宣伝などの。

星野源 – ドラえもん【MV & Trailer】/ Gen Hoshino – Doraemon

が、今回はこの宣伝がありません。
宣伝がないことによって、丸々フルで聴けるというなんとも太っ腹仕様になっているわけです。

ちなみに宣伝が差し込まれる理由としては、

「お金を出してCDを買ってくれた人が得をしてほしい」

という思いから、あえてフルでは聴けない仕様にしているそうです。

しかし、今回は配信限定シングルということもあって(もちろん250円という料金はかかりますが)

フル尺でアップされているというわけなんです。

あとはやはり、『アイデア』のMVだけは、全て通しで観てはじめて完成されますからね。

異例の制作期間

『アイデア』制作には実に8ヵ月以上もの時間を要したそうです。

楽曲制作に並々ならぬ拘りがある星野源。しかし彼のアーカイブでもここまでの制作期間の長さはまさに異例といえるでしょう。

昨年末に、テレビで流れる1番のみを歓声させ、年が明け『ドラえもん』の制作後に2番以降の制作に取り掛かったそうです。つまり1番から2番以降は数ヶ月のタイムラグが生じています。

『アイデア』感想

朝ドラの主題歌としてお茶の間に流れはじめて早4ヵ月。『アイデア』の1番を聴いたことがある方は多いのですはないでしょうか。

そう1番は。1番だけは。

細野晴臣やマーティン・デニーに代表される『エキゾチカ』からの影響を常に語る星野源らしい軽快なマリンバからの“これぞ星野源!”ともいうべきポップなメロディライン。

そして今までの彼の楽曲を彷彿とさせる歌詞、まさに“this is 星野源”の1番。

そう、ここまでがこの4ヵ月間、僕たちが聴いてきた『アイデア』だった。

ラジオ解禁もなし、情報は全てシャットダウン、4ヵ月間待てど暮らせどラジオを聴いてもホームページを見てもツイッターのアカウントを見ても一向に、『アイデア』の新着情報が流れてこない。

「おいおい星野源よ、ここまで焦らせて大丈夫か、もうちょっとやそっとのことじゃ驚かないぜ、こちとら耐性できてんだぞコラ」と、4ヵ月間ずっと待て状態だった僕たちリスナーの期待が日に日にはち切れんばかりに膨れ上がっていたことは言うまでもありません。

8月に入り遂に『アイデア』のリリース情報が解禁され、そして迎えた8月20日。

ダウンロード完了、音量を最大ボリュームに、両耳にイヤフォンをねじ込み、iPhoneの再生ボタンをタップ。

なんということでしょう?(ビフォアフ風)

いとも容易くこちらの期待の、想像の、予想の、遥か上を行くではありませんか。

1番はこの4ヵ月間聴き続けてきたあの『アイデア』

流れ出すイントロ、響き渡るストリングス

「おはよう、世の中」

朝ドラらしい一節から幕を開ける『アイデア』。

そして兎にも角にも2番以降の展開ですよ

え、?

ん?え?

2番入った瞬間思わず停止ボタンを押しましたよね。

『半分、青い。』のオープニングで曲の1番しか流れていないことを逆手にとった驚愕のフォルム。

星野源のことだから1番から何か変えてくるかとは思っていましたが、これは、ここまでとは、、

「おはよう 真夜中」

というフレーズから描き出されるアイデアの2番は一言で言えば、暗い

隠と陽でいえば隠

光と闇でいえば闇

カフェオレかブラックでいえばもはやエスプレッソ

もう明らかに、暗い。

そして歌詞もすごい。というかエゲツないほどの生々しさです。

独りで泣く声も
喉の下の叫び声も
すべては笑われる景色
生きてただ生きていて
踏まれ潰れた花のように
にこやかに 中指を

引用:星野源アイデア特設ページ

『地獄でなぜ悪い』や『化物』、『Crazy Crazy』、さらに遡れば1stアルバム収録の『ばらばら』といった『SUN』や『恋』以前の楽曲に通底している星野源の「狂気」、「暗さ」、それでいて「生きることを諦めないしぶとさ」、「生への執着』が全面に出ているように感じました。

さらにアレンジ。STUTSによる先鋭的ダンスビートのアレンジの妙たるや…。

「ストリングスやリズムはほとんど変えず、あくまでアレンジだけの変化で楽曲に緩急をつけたかった」と、星野源自身がラジオで語っていました。

・エキゾチカとj-POPのハイブリッド、イエローミュージックをこれまで以上に洗練されたかたちで鳴らしてみせたパブリックイメージの星野源印の第一幕。

・最新のブラックミュージックの先鋭的ビートに乗せて歌われる「生きてただ生きていて 踏まれ潰れた花のように にこやかに 中指を」というどこまでもリアルな歌詞、華やかな成功の裏で人知れず抱えていた深い闇、絶望を描いてみてせた第二幕。

・そして第三幕は、ソロミュージシャン星野源の原点ともいうべき弾き語り。

闇の中から歌が聞こえた
あなたの胸から
刻む鼓動は一つの歌だ
胸に手を置けば
そこで鳴ってる

引用:星野源アイデア特設ページ

暗く深い絶望の淵から駆け上がるようにして歌われる第三幕を経て、『アイデア』は遂にフィナーレへ

1番よりも遥かに熱量が増したバンドの演奏、そしてこれまで以上に力強い星野源の歌声。

酸いも甘いも、成功も絶望も、喜びも悲しみも、生も死も、全てに向き合い超えてきた男が奏でるメロディ、歌、とんでもない説得力。

いやもう本当にとんでもない。とんでもないよ。

これで4分半です。

わずか4分半の間に破壊と創造、理解分解再構築を行うって何の錬金術士だよ星野源、と。

いやぁとんでもない。

1番と2番の陽と隠、ポジティブとネガティヴの対比を経て原点の弾き語り、そして万感のグランドフィナーレ的3番。

さらに驚愕ポイントとしては、これだけ目まぐるしい構成、展開にも関わらずサビがほぼ同じ。
1番も2番も3番も同じ。でもそれぞれ聴こえ方はまるで違う。すげぇ。え?イリュージョン?

あとがき

ラスト、1番よりも遥かに熱量の増したバンドの演奏に胸がグッと熱くなりました。

それにしても、この熱いものが込み上げてくる感じどこかで…と、しばらく考え込んでいましたが、分かりました、この感じ。

少年漫画みたいなんだ、星野源の曲って。

少年漫画の主人公は、ボロボロになっても絶対に立ち上がる。どんな強敵が現れても絶対に負けない。

ピンチを、絶望を、超えていく。

その姿に胸を熱くさせられる。

星野源の楽曲もそう。

言わずもがな星野源自身、生死を彷徨う大病を乗り越えて今があります。

全てに実直に誠実に向き合い、誰よりも音楽を楽しむことを知っている星野源の楽曲に胸が熱くなる。

アイデアの最後に響き渡る銅鑼の音。

それは、星野源が今まで積み上げてきたイエローミュージックが音を立てて崩れ落ちた瞬間であると同時に、イエローミュージックのさらにその先へ、イエローミュージックを越えていこうとする星野源の決意表明のようにも感じたのは、きっと僕だけではないはず。