【個人的感想】ドレスコーズ『ジャズ』に感じた、退廃的な美。

           
  • 2019.05.04 公開
  • 2019.05.04 更新
  • レビュー
【個人的感想】ドレスコーズ『ジャズ』に感じた、退廃的な美。

終わる時代、始まる時代。時代の変わり目、節目。

令和元年。
令和で一番最初に聴くアルバムは、平成の頃から決まっていました。

ドレスコーズ6枚目のアルバム『ジャズ』

志磨遼平のキャリア史上最高傑作。音楽の美味しいところだけを丹念に抽出して熟成させたかのような、まるで一本何百万円もするような高級ワインのような、芳醇で濃厚な音。

余分なものをそぎ落とし、角を削り、ピカピカに磨き上げ、よりミニマルに、よりシンプに。
『ジャズ』はそんな時代の流れとは真っ向から真逆をゆく、おそろしく贅沢で豊かな作品です。予算も大幅にオーバーしてしまったとか。(まるでクイーンの『ボヘミアン・ラプソディ』のよう。)

一流のミュージシャン、一流のエンジニアを揃え、志磨遼平という音楽家の持てる限りの才能を注ぎ込み、この世に誕生した『ジャズ』は、聴く人を否応なしに音楽の旅へと誘う芸術作品です。

ここからは(ここからも)、『ジャズ』の個人的感想がひたすら続きます。

ドレスコーズ『ジャズ』感想

ドレスコーズ “THE END OF THE WORLD PARTY” PART 1

1. でっどえんど

三文オペラで音楽監督して携わった経験が遺憾なく発揮されたオープニング曲。

この世の果てまで行き着いてしまった一人の男、最果てに佇む独りの男、そんな男の後ろ姿が思い浮かびました。(まるでジャケ写のような男を)

志磨遼平版、現代版『クルト・ヴァイル』

2. ニューエラ

タイトルから連想されるのはやはり有名なキャップブランド『ニューエラ』。さらにそこからストリート系ファッションが思い浮かび「ヒップホップ系の曲か?」と聴く前には想像していましたが、ふたを開けてみると(聴いてみると)、シガーロスを彷彿とさせる壮大なスケールの楽曲でした。

最果てに佇む独りの男は、急に天を仰いで微笑んだ。何かを諦めたかのような静かな微笑み。『ニューエラ』では、そんな情景を想像しました。

3. エリ・エリ・レマ・サバクタニ

リードトラックの『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』

もうシンプルに格好良い。
全然単純じゃないけど単純に格好良い。一聴して直感するヤバい曲。男の内面に蠢く巨大な狂気を感じます。

4. チルってる

タイトルからしてイっちゃってる曲。

ラーメンに例えるなら、出汁のベースは、2トーン、ニューウェーブミュージック。チャーシューやトッピングの具材は、東京を感じさせるポップミュージック。

とにかく踊れるノれるハイブリッドな一曲。

男は何かをふっきれたのようにひたすら踊り、ゆれる。

「別に悲しんでるわけじゃないよ、チルってるだけだから〜」

5. カーゴカルト

切って張ったコラージュのような歌詞。
それにしても、志磨遼平の歌詞にはよく“タイガー”が登場するなぁ。

6. 銃・病原菌・鉄

昔のレコード作品を意識したかのような、アルバムの真ん中のインスト曲。

前半終了と後半開始のお知らせ。

7. もろびとほろびて

志磨遼平史上初の完全トラップミュージック。
『Hippies E.P.』期からちょくちょくと顔をのぞかせていましたが、ここに来て、顔どころか全身を覗かせた志磨遼平の新境地。

「あぁ、この人たしかにこんな感じ好きだよなぁ」というのがよく分かる、チルアウトでゆる〜いトラップミュージック。

まさにチルってる。

「核兵器じゃなくて 天変地異じゃなくて 倫理観と 道徳が 滅びる理由なんてさ」

曲はゆるくても歌詞は全くゆるくないのが志磨遼平。

人類最後の音楽。このアルバムの壮大なコンセプトを一番明確に表しているのがこの『もろびとほろびて』の歌詞だと思います。

悲しむことも憂うこともない、ただ、今ある現実をありのままにスケッチしたかのような、どこか他人事のような第三者目線で綴られた歌詞。

「セブンイレブンがあったらいい デイドリームだけ信じてたい」

人類の終わりとか、この国の今後のこととか、壮大なテーマを歌っているのに急に自分から半径100m圏内の世界を歌い出すユーモアと愛らしさ。

8. わらの犬

タイトルからまず連想したのがドレスコーズ 1stシングル『Trash』のカップリング曲『パラードの犬』。

物凄くコクとパンチがある赤ワインのような曲だと思いました。

9. プロメテウスのばか

もうやけっぱち。世界の終わり。「どうしようもないんだから騒がないと損!損!」と、ばかりに踊り狂う狂騒的な世界の終わりのパーティ。

ゲストミュージシャンの「加藤隆志」と「茂木欣一」、スカパラの本領発揮と言わんばかりのブチ上がり度。

そして、それを9曲目に持ってくるニクい曲順。

10. Bon Voyage

ドラマの主題歌であり、今作で最もポップな一曲。

世界的なLGBTの波を連想させる、同性から同性への愛を歌った詞。

ジェンダーに対する意識が変わりゆく21世紀。同性から同性へのラブソングが今後増えるのかもしれません。

11. クレイドル・ソング

『Bon Voyage』で大円団を迎えて『クレイドル・ソング』と『人間とジャズ』はまるでエピローグというか映画のエンドロールのようです。

ここまで聴いてきて、ふと、序盤、頭の中に登場したあの男、世界の終わりに佇む独りの男、「あいつ、そういやどうなったけ?」

と、考えていると、

「死ぬのは こわかったわ」

という歌詞が耳を貫く。

そう、男は死んだ。たぶん自殺ではなく、なるべくして、それを受け入れて、死んだ。

悲しいことじゃない、きっとずっと前から決まっていたこと。

12. 人間とジャズ

『人間とジャズ』は、ズタズタにに引き裂かれた高価な洋服のような一曲。

何処からか辛うじて届く電波。誰が誰に向けて飛ばしているのか、今となってはもう分からない。
電波を飛ばしていたのは、あの男なのか、それともあの男は受取る側だったのか…

電波の受信音は続き、そしてループする。

あとがき

ドレスコーズ “THE END OF THE WORLD PARTY” PART 2

物語は、始まりがあって終わりがある。
当然のことですが。そんな当然のことを改めて実感させてくれる『ジャズ』という一つの芸術作品。

退廃的な“美”。崩れ去るものを“美しい”と思う感情を『ジャズ』にも感じました。